不確かさ活用
定の不確かさは測定結果の信頼性を表す方法として、測定結果の表現のルールを示す国際文書
(Guide to the expression of uncertainty in measurement :GUM)が1993 年に出版され、その後
の改訂内容も含め1996 年に国内に紹介されて以来不確かさの理解とその活用は計量器の校正分野で
は不確かさの評価と明示が定着してきた。
さらに国際化の進展により、国内規格の国際規格への整合性が進み、各種試験へのISO/IEC 17025
「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」、計量管理へのISO 10012「計測マネジメント
システムー測定機器に関する要求事項」の適用をはじめ、計量に関わる業務に国際規格または指針の
適用が求められてきており、測定の不確かさの理解が進んでいる。
しかし、規格適合性評価のための検査における測定、品質を作り込むといわれるモノ作りにおける
測定など、第一線の現物の測定における不確かさは対象の分野が広く、要求レベルも多様のため、不
確かさの評価、活用は個々の企業、検査・試験機関に止まり、紹介される事例は少ない。また、不確
かさを求める方法が分からない、不確かさを求める過程が複雑で不確かさ活用の効果が不明、不確か
さを求めなくても測定結果を信頼できるなどの理由からその展開は十分ではない。
不確かさの活用としては大別すると次の2つの面が考えられる。
@ 検査のためのガードバンドの適用
規格適合判定において、安全性の判断における危険性の予防、供給側と受領側の判定差異の予防
のため、測定の不確かさに相当する幅(ガードバンド)を考慮した判定の実施。
A 製品品質への不確かさの影響評価
製品製造における製品の品質を示すばらつきへの測定の不確かさの影響評価の実施。
いずれの場合も測定の不確かさの大きさによる損失が生じるので、不確かさの評価と改善活動の効
果が得られる。
本年度の委員会の活動は少ない情報の中から、現物の測定に関わる不確かさの調査及び活用を進め
られている研究機関と企業の事例を中心に紹介するもので、本書をきっかけとして、多くの事例が寄
せられ、測定の不確かさの評価と改善の展開が進み、製品の安全・安心への寄与、検査における誤判
定・判定トラブルの減少、品質の向上などによる損失の減少を期待するものである。
不確かさ活用
1 適用範囲
1.1 この規格は,サンプリングを含め,試験又は校正を行う能力に関する一般要求事項を規定する。この規格は,規格に規定された方法,規格外の方法,及び試験所・校正機関が開発した方法を用いて実施される試験及び校正を含む。
1.2 この規格は,試験又は校正を実施するすべての組織に適用できる。これらの組織は,例えば,第一者,第二者及び第三者の試験所・校正機関を含み,また,検査及び製品認証の一部をなす試験又は校正を行う試験所・校正機関を含む。
この規格は,職員の数又は試験・校正活動の範囲の大小に関係なくすべての試験所・校正機関に適用できる。ある試験所・校正機関がこの規格に含まれる
活動の一つ又は幾つか,例えば,サンプリング,新規の方法の設計・開発のような活動を請け負わない場合には,それらの項目の要求事項は適用されない。
1.2 この規格の注記は,規定内容の明確化,事例及び指針を与えるものである。注記は,要求事項を含まない。また,この規格の必す(須)部分を構成するものではない。
1.4 この規格は,試験所・校正機関が品質上,管理上及び技術上の運営のために自身のマネジメントシステムを開発するに当たって使用するためのものである。試験所・校正機関の顧客,規制当局及び認定機関が,試験所・校正機関の能力を確認又は承認するに当たってこの規格を使用してもよい。この規格は,試験所・校正機関を認証するための基礎として使用することを意図していない。
注記1 この規格における“マネジメントシステム”という用語は,試験所・校正機関の運営を統括する品質上,管理上及び技術上のシステムを意味する。
注記2 マネジメントシステムの認証を登録と呼ぶことがある。
1.5 試験所・校正機関の運営に関する法令上及び安全上の要求事項への適合は,この規格には含まれていない。
1.6 試験所及び校正機関がこの規格の要求事項に適合している場合,その試験・校正活動に関して,JIS Q9001の原則を満たす品質マネジメントシステムを運営しているであろう。附属書Aに,この規格とJIS Q9001との項目対照表を示す。この規格は,JIS Q 90Olには含まれていない技術的能力に関する要求事項を含んでいる。
注記1 矛盾がないように婁求事項を適用することを確実にするためには,この規格の幾つかの要求事項を説明し又は解釈することが必要であろう。特定分野に対する適用を確立するための,特に認定機関(JIS Q 17011参照)のための指針を附属書Bに示す。
注記2 試験所・校正機関が白身の試験・校正活動の一部又は全部についての認定を希望する場合に は,JIS Q 17011に従って運営している認定機関を選択することが望ましい。
注記3 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO/IEC 17025:2005, General requirements for the competence oftesting and calibrationlaboratories(IDT)
2 引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。) を適用する。
JIS Q 17000 適合性評価一用語及び一般原則
注記 対応国際規格:ISO/IEC 17000:2004. Conformity assessment-Vocabulary and general principles(IDT)
VIM, International vocabulary of basic and general terms inmetrology, issued by BIPM, IEC, IFCC, ISO、
IUPAC, IUPAP and OIML
3 用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Q 17000及びVIMによる。
注記 品質に関連する一般的な定義は,JISQ9000に規定されており,一方,JISQl7000は特に認証及び試験所認定に関連する定義を規定している。異なった定義がJIS Q 9000に規定されている場合には,JIS Q 17000及びVIMの定義を優先する。
4 管理上の要求事項
4.1 組織
4.1.1 試験所・校正機関又はそれを一部分とする組織は,法律上の責任を保持できる存在であること。
4.1.2 この規格の要求事項に適合し,かつ,顧客,規制当局又は承認を与える機関の二一ズを満たすような方法で試験・校正活動を運営することは,試験所・校正機関の責任である。
4.1.3 マネジメントシステムは,試験所・校正機関の恒久的施設,恒久的施設以外の場所又は関連の一時的若しくは移動式の施設において行われる業務を対象範囲に含めること。
4.1.4 試験所・校正機関が試験又は校正以外の活動を行う組織の一部分である揚合には,潜在的な利害の衝突を特定するため,その組織内で試験所・校正機関の試験・校正活動に関与する又は影響する幹部要員の責任を明確に規定すること。
注記1 試験所・校正機関が大きな組織の一部分である場合,その組織構成は,製造,営業販売又は財務のような利害の衝突がある部門が,この規格の要求事項に対する試験所・校正機関の適合性に悪影響を及ぼさないような構成であることが望ましい。
注記2 試験所・校正機関が第三者機関であると承認されることを望む場合には,公平であること並びにその機関及び機関の要員が技術的判断に影響し得る不当な商業的,財務的又はその他の圧力を受けないことを実証できることが望ましい。第三者試験所又は校正機関は,その機関が行う試験・校正活動に関する判断の独立性及び誠実性に対する信用をきず付けるおそれのある活動に従事しないことが望ましい。
4.1.5 試験所・校正機関は,次の事項を満たすこと。
a) マネジメントシステムの実施,維持及び改善を含む責務を果たし,マネジメントシステム又は試験・校正の実施手順からの逸脱の発生を見つけ出し,その逸脱を防止又は最小化する処置を指揮するために,必要な権限及び経営資源を他の責任にかかわらずもつ管理要員並びに技術要員をもつ(5.2を参照)。
注記 経営資源とは,人,もの,財のことをいう。
b) 管理主体及び要員が,業務の品質に悪影響を与えるおそれがあるいかなる内部的及び外部的な営業上,財務上又はその他の圧力を受けないことを確実にするための体制をもつ。
c) 結果の電子的手段による保管及び伝送を保護する手順を含め,顧客の機密情報及び所有権の保護を確実にするための方針及び手順をもつ。
d) 試験所・校正機関の能力,公平性,判断又は業務上の誠実性に対する信頼を損なうおそれのあるいかなる活動にも試験所・校正機関が関与することを避けるための方針及び手順をもつ。
e) 試験所・校正機関の組織及びマネジメント構造,親組織における位置,並びに品質マネジメント,技術的運営及び支援サービスの間の関係を明確に規定する
f) 試験・校正の品質に影響する業務のマネジメント,実施又は検証に当たるすべての要員の責任,権限及び相互関係を明確に規定する。
g) 訓練中の者を含め,試験・校正に当たる職員に対し,個々の試験・校正の方法及び手順,目的並びに試験,校正結果の評価に精通した人物によって適切な監督を行う。
h) 試験所・校正機関の運営の要求品質を確実に実現するために必要な技術的運営及び経営資源の供給に総合的な責任をもつ技術管理主体をもつ。
i) 他の責務及び責任のいかんにかかわらず,品質に関連するマネジメントシステムが常に実施され遵守されていることを確実にするための明確な責任及び権限を付与された職員1名を品質管理者(いかなる名称でもよい。) に指名する。品質管理者は,試験所・校正機関の方針又は経営資源について決定を行う管埋の最高レベルに直接接触できること。
j) 主要な管理要員の代理者を指名する (注記を参照)。
k) 組織の要員が,白らの活動のもつ意味と重要性を認識し,マネジメントシステムの目標の達成に向けて自らどのように貢献できるかを認識することを確実にする。
注記 個入が複数の職務を受けもつことがあり,それぞれの職務に代理者を指名するのは実際的でないことがある。
4.1.6 トップマネジメントは,試験所・校正機関内にコミュニケーションのための適切なプロセスが確立されることを確実にすること。また,マネジメントシステムの有効性に関しての情報交換が行われることを確実にすること
4.2 マネジメントシステム
4.2.1 試験所・校正機関は,その活動の範囲に対して適切なマネジメントシステムを構築し,実施し,維持すること。試験所・校正機関は,試験・校正結果の品質を保証するために必要な程度まで,試験所・校正機関の方針,システム,プログラム,手順及び指示を文書化すること。このシステムの文書は,担当の要員に周知され,理解され,いつでも利用できる状態におかれ,かつ,実施されていること。
4.2.2 試験所・校正機関における品質方針表明を含む品質に関連したマネジメントシステムの方針は,品質マニュアル(いかなる名称でもよい。)の中に明確に規定すること。試験所・校正機関は総合的な目標を確立し,マネジメントレビューの中でレビューすること。品質方針表明は,トップマネジメントの権限によって発行すること。この文書は少なくとも次の事項を含むこと。
a) 顧客へのサービス提供において,良好な専門職業務及び試験・校正の品質を守るという試験所・校正機関の管理主体のコミットメント
b) 試験所・校正機関のサービスの水準に関する管理主体の表明
c) 品質に関連したマネジメントシステムの目的
d) 試験所・校正機関における試験・校正活動に関係するすべての要員に対し,品質文書に精通し,業務において方針及び手順を実施することの要求
この規格への適合性を守り,マネジメントシステムの有効性を継続的に改善するという試験所・校正機関の管理主体のコミットメント
注記 品質方針表明は簡潔であることが望ましく,常に試験又は校正を決められた方法及び顧客の要求事項に従って行うことという要求を含んでもよい。
試験所・校正機関が大きな組織の一部分である場合には,品質方針の幾つかの要素が他の文書に含まれることがある。
4.2.3 トップマネジメントは,マネジメントシステムの構築及び実施,並びにその有効性を継続的に改善することに対するコミットメントの証拠を示すこと。
4.2.4 トップマネジメントは,法律・規制要求事項を満たすことは当然のこととして,顧客要求事項を満たすことの重要性を組織内に周知すること。
4.2.5 品質マニュアルには,技術的手順を含めて支援の手順を含めるか,又はその参照を示すこと。品質マニュアルは,マネジメントシステムにおいて使用する文書の構成の概要を示すこと。
4.2.6 この規格への適合を確実にする責任を含め,技術管理主体及び品質管理者の役割及び責任を品質マニュアルの中に明確に規定すること。
4.2.7 トップマネジメントは,マネジメントシステムの変更を計画し実施するときに,そのマネジメントシステムの"完全に整っている状態"(integrity)が維持されることを確実にすること。
4.3 文書管理
4.3.1 一般
試験所・校正機関は,法令,規格,その他の基準文書,試験・校正方法,並びに図面,ソフトウェア,仕様書,指示書及びマニュアルのような,マネジメントシステムの一部を構成するすべての文書(内部で作成した文書及び外部で発行された文書)を管理する手順を確立し,維持すること。
注記1 ここでいう"文書"とは,方針表明文,手順書,仕様書,校正値表,チャート,教科書,ポスター,通知,覚書,ソフトウェア,図面,図解,その他であり得る。それらはハードコピー又は電子的記録など様々な媒体によってよく,また,デジタル,アナログ,写真又は手書きによるものでもよい。
注記2 試験及び校正に関係するデータの管理は,5.4.7に規定されている。記録の管理は,4.13に規定されている。
4.3.2 文書の承認及び発行
4.3.2.1 マネジメントシステムの一部として試験所・校正機関の要員に向けて発行されるすべての文書は,発行に先立って権限をもった要員が確認し,使用の承認を与えること。マネジメントシステムの中の文書について現在の改訂状況及び配布状況を識別するためのマスターリスト又は同等の文書管理手順を確立し,無効文書及び/又は廃止文書の使用を排除するため,このリストなどをいつでも利用できる状態にすること。
4.3.2.2 採用された手順は,次の事項を確実にすること。
a) 試験所・校正機関の効果的な機能遂行に不可欠な業務を行うすべての場所で,適切な文書の公式版がいつでも利用できる。
b) 適用される要求事項に対する継続的な適切さと適合性を確実にするため,文書を定期的に見直し,必要に応じて改訂する。
c) 無効文書又は廃止文書は,すべての発行場所若しくは使用場所から速やかに撤去するか,又は他の方法によって誤使用を確実に防止する。
d) 法令上の目的又は知識保存の目的で保持する廃止文書は,適切にその旨を表示する。
4.3.2.3 試験所・校正機関が作成したマネジメントシステム文書を個別に識別すること。この識別には,発行の日付及び/又は改訂の識別,ページ番号付け,全ページ数又は文書の終わりを示す何らかの記号,及び発行権限をもつ者の名を含めること。
4.3.3 文書の変更
4.3.3.1 文書に対する変更は,他の特別の指定がない限り,その文書の初版の確認を行った部署が確認及び承認を行うこと。指定された要員が,確認及び承認の根拠となる関連の背景情報に接触できるようにすること。
4.3.3.2 実行可能な場合,変更された記述又は新しい記述を,その文書の中又は適切な附属文書の中で識別すること。
4.3.3.3 試験所・校正機関の文書管理システムが,文書の再発行までの期間に手書きによる文書の修正を認める場合には,そのような修正の手順及び権限を明確に規定すること。修正箇所は明りょう (瞭)に表示し,署名(initial)及び日付を付けること。実行可能な限り,早期に改訂文書を正式に再発行すること。
4.3.3.4 コンピュータ化されたシステム中に保持されている文書の変更をどのように行い,管理するかを規定する手順を確立すること
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