ISO17025ガイドライン
1. はじめに
ISO/IEC 17025 では、分析結果に伴う不確かさを試験所が算定し、提供することが要件
として定められている。そのためには、「残留農薬分析における適正試験所規範ガイドライ
ン」(CAC/GL 40-1993)に従い食品検査を行う試験所は、その試験所で特に日常的に用い
る分析法について、不確かさの推定に使用可能な分析法の妥当性確認/検証、試験室間試
験、および内部精度管理により得られた十分なデータを活用すべきであり、これらはその
試験所で特に日常的に用いる分析法の不確かさの推定に適用できる。本ガイドラインは、
コーデックス分析・サンプリング法部会(CCMAS)の一般的提言を考慮に入れて作成さ
れた。
1.1 不確かさの概念とその成分
測定の不確かさとは、測定プロセスにより得られたデータに伴う「不確かさ」をいう。
分析化学では一般に検査プロセスに伴う不確かさを指すが、サンプリングに伴う不確かさ
の成分も含まれることがある。
したがって、不確かさの「推定値」は、報告結果または実験結果を中心として、真の値
が一定の確率で存在すると期待できる範囲を示したものである。これは、個々の結果と真
の値との差として定義される測定誤差とは異なる概念である。不確かさを報告する目的は、
報告結果の妥当性の信頼度を高めることにある。
データの不確かさの要因はさまざまである。表1 および表2 にその詳細を示す。不確か
さの評価に当たっては、測定プロセスに含まれる個々の作業に関する不確かさの要因を理
解し、推定することが必要である。
2. 不確かさの要因の特定
一般に、測定値の不確かさは、試料に関わる種々の作業に起因するさまざまな成分によ
って構成される。分析結果の不確かさは、以下に示す測定の主要な3 段階の影響を受ける。
. 外部作業:試料のサンプリング(SS)、梱包、出荷、および保管1
1 試料の梱包、出荷、保管、および試験所での調製は、検出される残留物に大きく影響する可能性がある
が、それらが不確かさにどのように寄与しているかを現在の情報に基づいて定量化することは不可能な場
合が多い。こうした誤差の例としては、サンプリング場所の選択、サンプリング時期、誤った表示、分析
対象成分の分解、試料の汚染などがある。
. 分析試料の準備:サブサンプリング、試料調製、および試料処理(SSp)
. 分析(SA):抽出、洗浄、蒸発、誘導体化、機器による測定2
誤差伝播の法則により、合成標準不確かさ(SRes)および相対不確かさ(CVRes)は以下
のように算出することができる。
(1)
試料全体を分析した場合の平均残留量は変わらず、その式は以下のように表すことがで
きる。
(2)
ここで、CVL は試験所での測定段階の相対不確かさを表しており、サブサンプリング、
試料調製、試料処理、分析手順などに起因するものである。
ただし、1 つの試験所が推定しなければならない不確かさは、通常その試験所が管理す
るプロセスに伴う不確かさのみに限られている。つまり、サンプリングの責任を試験所の
職員が負わない場合は、その試験所で行われるプロセスに伴う不確かさのみを推定すれば
よいということである。
2.1 分析測定誤差
測定誤差はほとんどの場合、大誤差、偶然誤差、系統誤差の3 種類に区別することがで
きる。
大誤差(gross error)とは、分析結果を得る過程で生じる意図しない/予測不可能な誤
差をいう。この種の誤差があると、その測定値は無効になる。大誤差は、試験所の品質保
証手順によって最小限に抑える必要がある。大誤差を統計的に評価し、不確かさの推定に
加えることは不可能であり、また望ましいことではない。本文書では、大誤差についてこ
れ以上論じる必要はない。
偶然誤差(random error)はあらゆる測定値に含まれており、試験を繰り返すと、その
結果が平均値の上下に分布するのはこの誤差のためである。1つの測定値の偶然誤差を補
正することはできないが、観察の回数を増やし、分析者が訓練を積むことでその影響を低
減することは可能である。
系統誤差(systematic error)はほとんどの実験で生じるが、その影響はそれぞれ大き
2 回収率について結果の補正が行われた場合は、この補正に伴う不確かさを含めるものとする。
= + + = +
= + +
く異なっている。ある実験に含まれる全ての系統誤差の総和はバイアスと呼ばれる。測定
数を増やしても系統誤差の総和はゼロにはならないため、分析を反復することによって
個々の系統誤差を直接検出することは不可能である。系統誤差に関する問題は、事前に適
切な注意を払わなければ誤差が検出されない可能性があるという点である。実際に、ある
分析の系統誤差を明らかにするには、その分析法を標準物質に適用するか、別の分析者に
できれば別の試験所で試料を分析してもらうか、または別の分析法によって試料を再度分
析する以外に方法はない。しかし、分析対象成分、マトリックス、濃度に関して標準物質
が完全に一致する場合に限っては、その分析法のバイアスを明らかにする理想的な条件を
満たしていることになる。さらに、分析法のバイアスは回収率試験によって調べることも
できる。ただし、回収率試験では分析の影響(SA)しか評価されず、自然に生じた試料や、
分析段階以前に生じたバイアスの成分に適用できるとは限らない。農薬分析では通常、回
収率による結果の補正は行わないが、平均回収率が100%から大幅に外れる場合には補正
が必要である。回収率によって結果を補正した場合は、回収率に伴う不確かさを測定の不
確かさの推定に含めるべきである。
誤差の要因の例を表1 および表2 に示す。ただし、不確かさの推定では、ここに挙げた
全ての要因を評価する必要はない。全体的な不確かさにすでに含まれている要因もあれば、
影響が無視できるため除外してよい要因もあるからである。ただし、除外する前にあらゆ
る要因を確認し、評価することが重要である。詳細については、すでに発表されている文
書を参照するとよい3,4。
3 EURACHEM Guide to Quantifying Uncertainty in AnalyticalMeasurements, 2nd ed. 1999[分析測
定値の不確かさの定量化に関するEURACHEM ガイド 第2 版],
http://www.measurementuncertainty.org
4 Ambrus A. Reliability of residue data[残留データの信頼性], Accred.Qual. Assur. 9, pp. 288-304.
2004.
表1.分析試料の準備段階における誤差の要因
系統誤差の要因 偶然誤差の要因
試料調製 分析対象となる試料(分析試
料)の選択が不適切
分析試料が他の試料に接触し、汚染され
る
洗浄やブラッシングが一様に行われて
いない、茎や石の除去方法に違いがある
試料処理
(SSp)
試料処理中の分析対象成分の
分解、試料の交差汚染
分析試料1 単位ごとに含まれる分析対象
成分が均一でない
粉砕/細断した分析試料に含まれる分
析対象成分が均一でない
均質化処理中の温度の変動
均質化処理の効率に影響を及ぼす植物
材料の組織(成熟度)
表2.分析段階(SA)における誤差の要因:
系統誤差の要因 偶然誤差の要因
抽出/洗浄 分析対象成分の回収率が不十
分
食品から採取した試料材料の組成(水分、
脂肪分、糖度など)にばらつきがある
共に抽出される物質による干
渉(吸着剤の負荷)
試料/溶媒マトリックスの温度および
組成
定量的測定 共に抽出される化合物による
干渉
機器の名目容積の許容区間内でのばら
つき
分析標準物質の純度が不適切 秤の精度および直線性
重量/体積測定値のバイアス 不十分でばらつきがある誘導体化反応
アナログ機器・装置を読み取る
操作者側のバイアス
分析中に生じた試験室の環境条件の変
化
試料に由来しない物質の測定
(梱包材料による汚染など)
注入、クロマトグラフィー、および検出
条件の変化(マトリックス効果、システ
ムの不活化、検出器の反応、SN 比の変動
など)
残留物の定義と異なる物質の
測定
操作者の影響(注意不足)
較正のバイアス 較正
3. 測定の不確かさの推定方法
試験所における測定の不確かさの推定方法にはさまざまな選択肢が存在するが、最も一
般的に用いられているのは、「ボトムアップ」アプローチと「トップダウン」アプローチ1
と呼ばれる2 つの方法である。
ボトムアップ法:
ボトムアップアプローチまたは成分ごとのアプローチは作業ベースのプロセスを採り入
れたものであり、分析者が全ての分析操作を基本的な作業に分解する。その上で、これら
の基本的作業を共通の作業としてまとめ、あるいはグループ化し、そのそれぞれが測定プ
ロセスの合成不確かさの値にどの程度寄与しているかを推定する。ボトムアップアプロー
チは多大な労力を要する場合があり、また分析プロセス全体に関する詳細な知識が必要で
ある。分析者にとってのメリットは、測定の不確かさに強く関与している分析作業につい
て明確な理解が得られることと、そのことによって、将来その分析法を適用する際に、測
定の不確かさを低減・管理するための重要管理点を特定できることである。
トップダウン法:
トップダウンアプローチは、試験所の対照試料、技能試験の結果、公表文献のデータ、
試験室間共同試験から得られた分析法の妥当性評価データおよび長期的な精度のデータに
基づいている。試験室間試験に基づく不確かさの推定では、試験所間のデータのばらつき
も考慮に入れることができるため、分析法の性能およびその適用に伴う不確かさについて
信頼できる推定値が得られる。ただし、共同試験は特定の分析法と参加試験所の性能を評
価するために設計されるものである点を認識することが大切である。試料については一般
に十分な均質化が行われることが多いため、共同試験では試料の調製や処理による精度不
良の評価は行わないのが普通である。
残留農薬分析を行う試験所では通常数多くの食品中の200 種類以上の残留物質の検査を
行っており、その組み合わせは事実上無限である。したがって、複数の残留物に関する手
順に伴う不確かさを推定するためには、分析法/分析対象成分/マトリックスの各組み合
わせに関する不確かさを明確化するのではなく、残留農薬分析における適正試験所規範ガ
イドラインの該当箇所に従って、物理化学的特性および組成に関して分析対象となる残留
物質や食品を代表する適切に選択された一連の分析対象成分および試料マトリックスを用
いることが推奨される。不確かさの推定のために一連の代表的な分析対象成分およびマト
リックスを選択する際には、そのマトリックス/分析対象成分の組み合わせに関する妥当
性確認データや研究による裏づけが必要である。
以上を要約すると、試験所が不確かさに関するデータを構築および精緻化するには、試
験所内の長期的な精度のデータを用いるか、または作業ベースの方法(成分ごとの算定)
を用いる必要がある。
さらに状況によっては、試料のばらつきが不確かさにどの程度寄与しているかを推定す
ることが適切である。そのためには、試料ロット内の分析対象成分のばらつきを把握する
必要があるが、試験所や分析者がこうしたデータを入手することは容易ではない。8500
種類以上の残留データの統計解析から得られた値(表4)は、現時点における最良の推定
値である5。これらの推定値は、合成不確かさの値に採り入れることができる。
同様に、試料の保管・処理中の分析対象成分の安定性によって分析者や試験所の間で分
析対象成分にばらつきが生じる可能性が高い場合は、こうした安定性を考慮に入れる必要
がある。
3.1 複数成分の分析を含む結果の不確かさの推定
構造異性体や光学異性体、代謝産物その他の分解産物など、技術的混合物の適用によっ
て生じた複数成分からなる残留物の分析結果の不確かさを推定する場合、特に残留物成分
全体またはその一部の総和に関してMRL が設定されている場合には、別のアプローチが
必要と考えられる。複数ピークの測定に基づく結果の偶然誤差および系統誤差の評価につ
いては、最近発表された文献に詳しく説明されている6。
4. 不確かさの許容範囲の指針値
単一の試験所で実施された一連の試験の標準偏差を標準不確かさの測定指標として設定
するには、結果の大規模データセットが必要であるが、それが常に入手できるとは限らな
い。しかし、以下の方法を用いれば、少量のデータに関して真の標準偏差を推定すること
が可能である。
真の標準偏差(σ)、算出した標準偏差(S)、および95%の確率で期待できる平均値の
範囲(χ)の関係を、観察数(n)別に表3 に例示した。倍率f は、推定値と真の値の関
係を測定数の関数として示したものである。
5 Ambrus A and Soboleva E. Contribution of sampling to thevariability of residue data[残留データ
のばらつきに対するサンプリングの影響], JAOAC. 87, 1368-1379, 2004.
6 Soboleva E., Ambrus A., Jarju O., Estimation of uncertainty ofanalytical results based on multiple
peaks[複数ピークに基づく分析結果の不確かさの推定], J. Chromatogr. A.1029. 2004, 161-166
表3. 標準偏差および平均値の期待範囲を算定するためのf 値
N Smin = f1σ Smax = f2σ χ= ±f3S
f1 f2 f3
5 0.35 1.67 1.24
7 0.45 1.55 0.92
15 0.63 1.37 0.55
31 0.75 1.25 0.37
61 0.82 1.18 0.26
121 0.87 1.13 0.18
例:残留物を含む均質化された試料から得た5 つの分析試料から、試験室での作業の併
行精度CVL を算出した。検出された残留物の平均値は0.75 mg/kg、標準偏差は0.2mg/kg
であった。したがって、処理試料の真の残留量は0.75±1.24*0.2 = 0.75±0.248 mg/kg と
予測でき、測定結果の真の不確かさは95%の確率で0.0696 (0.2*0.35)〜0.334 (0.2*1.67)
mg/kg であると推定される。
表4 に示した標準不確かさの指針値は多くのデータに基づいており、1 つの試験所にお
ける不確かさの推定値の現実性評価に用いることで、非合理的な高い値や低い値を避ける
ことができる。
表4. 残留農薬のサンプリングと分析の主な手順に関する不確かさの標準的な期待値
手順 相対不確かさ 備考
植物由来食品のサンプリング
任意のロットから無作為に
採取した複合試料における
平均残留量の変動を反映。事
後手順の誤差は含まない。
中型および小型の食品
(サンプル数:10 以上)a:
26〜30%b
MRL がバルク試料におけ
る平均残留量を示すこと
から、MRL 適合性検査で
はサンプリングの不確か
さを0 とする。
大型の食品
(サンプル数:5 以上)a:36
〜40%b
動物由来食品のサンプリング 規定の違反率(βp)検出用に
採取すべきサンプル数(n)
と任意の確率(βt)との関係
は、以下のように表される
a:1−βt = (1−βp)n
一次試料はロット全体か
ら無作為に選択しなけれ
ばならない。
試料処理
分析試料を均質化するため
の物理的操作およびサブサ
ンプリングは含めるが、分析
対象成分の分解および蒸発
は含まない。
試料マトリックスや機器に
よって大きく異なる。標準値
を示すことはできない。分析
者は値を8〜10%以下に保つ
よう努力すべきであるc。
試料を細断/均質化する
ための機器や試料マトリ
ックスの影響を受けるこ
とがあるが、分析対象成分
とは無関係である。
分析
分析試料のスパイク時点以
降の全ての手順を含む。
試験室内再現精度:濃度1 μ
g/kg〜1 mg/kg の場合、16〜
53%c
0.001〜10 mg/kg 以内の場合
の平均試験室間再現精度:
25%d
農薬と食品のさまざまな
組み合わせを用い、その分
析法の使用期間に日を変
えて実施した回収率試験
から、標準CVA を便宜的に
測定することができる。
注:
(a) Recommended Method of Sampling for the Determination of Pesticide Residues
for Compliance with MRLs[残留農薬のMRL 適合性判定のための推奨サンプリ
ング法], (CAC/GL 38-1999).
(b) Ambrus A. Soboleva E. Contribution of sampling to the variability of residue
data[残留データのばらつきに対するサンプリングの影響], JAOAC, 87,
1368-1379, 2004;
(c) Guidelines on Good Laboratory Practice in Residue Analysis[残留物分析におけ
る適正試験所規範ガイドライン] (CAC/GL 40-1993)
(d) Alder L., Korth W., Patey A., van der Schee and Schoeneweis S., Estimation of
Measurement Uncertainty in Pesticide Residue Analysis[残留農薬分析におけ
る測定の不確かさの推定], J. AOAC International, 84, 1569-1578, 2001
個々の試験所で推定した不確かさに加え、規制当局その他のリスク管理者が測定の拡張
不確かさの規定値を決定することがある。これは、試験室間再現精度に基づくMRLの適
合性判定(セクション5 を参照)に用いることができる。例えば、CVL の50%拡張不確か
さは妥当な規定値とみなされている。
5. 不確かさに関する情報の利用
分析結果は必要に応じて、以下に示す拡張不確かさ(U)と共に報告しなければならな
い。
結果 = x±U(単位)
拡張不確かさ(U)は合成標準不確かさ(SRes)に基づき、EURACHEM の推奨する包
含係数2 を用いるか、または必要な信頼水準(通常は95%)に関するStudent のt 値(有
効自由度は20 未満)を用いて算出することができる。それぞれの拡張不確かさの算出方
法は以下の通りである。
U = 2SRes または U = tν,0.95SRes (3)
報告する分析結果の数値は、最後の桁は不確定でもよいという一般原則に従うものとす
る。計算の初期段階で丸めを行うと、算出した値に不必要なバイアスが生じる可能性があ
るため、丸めは最終結果についてのみ行うべきである。
解析の目的としては、一試料に関して残留物含有量の最良推定値が報告されるものと想
定される。結果をどのように解釈するかは検査目的によって異なる。一般的な理由として
は、国の定めるMRL に適合しているかを確認する検査、輸出食品がコーデックスのMRL
に適合していることの認証などが挙げられる。
5.1 MRL 適合性検査
図1 は、残留物の測定値、それに対応する不確かさの区間、およびMRL に関して、検
査結果がどのように表示されるかを示したものである。
図1. 測定値の不確かさの期待値とMRL の関係の例
状況(i)測定の不確かさの区間に挟まれた分析結果がMRL よりも大きい。その結果は、
サンプリングロットに含まれる残留量がMRL を超えていることを示す。
状況(ii)
分析結果の値がMRL よりも大きく、測定の不確かさの下限値がMRL よりも下にある。
状況(iii)
分析結果の値がMRL より小さく、測定の不確かさの上限値がMRL よりも上にある。
状況(iv)
測定の拡張不確かさの区間に挟まれた分析結果がMRL よりも小さい。
5.2 判定の環境
図1 に例示した各状況は、植物由来食品に関するものである。動物由来食品の残留量が
MRL に適合するかについては、「残留農薬のMRL 適合性判定のための推奨サンプリング
法」(CAC/GL 33-1999)に関する文書に記載された分布によらない統計手法と例に基づく
サンプリング計画に従って判定する必要がある。
コーデックスサンプリング手順に定める最小サンプル数および最小試料量で測定された
各試料の残留量は、MRL に適合していなければならない。したがって、拡張不確かさは
式1:U = kSL(SL = CVL*残留量)のSL を用いて算出すべきである。
状況(i)における判定は明瞭である。地域で生産または輸入された食品が国の定める
MRL に適合しているかを調べる検査に関して、分析法の性能を含む不確かさについての
冗長な説明を避けるため、試験所はその試料の分析結果を「‘x − U’以上の残留物」が
含まれていると報告できる。これは、「測定の不確かさに起因するあらゆる合理的疑いの余
地なくMRL を上回っていた」という要件を満たしている。
状況(iv)では、その試料がMRL に適合していることは明らかである。
状況(ii)および(iii)では、合理的疑いの余地なくMRL を上回っている、あるいは
MRL に適合していると結論づけることはできない。以下に論じるように、政策決定者に
よる措置についてさらに検討する必要があると考えられる。
状況(ii)および(iii)の影響は国の規範によって異なり、貿易される貨物の受け入れ
を大きく左右する可能性がある。状況(ii)や(iii)に示したような検査結果が得られた
場合、国内市場や国際貿易における製品の流通には慎重を期すべきである。例えば製品の
輸出を認可する場合、状況(ii)や(iii)のような残留結果が得られた製品については、
貨物の輸出は推奨できない。状況(ii)のような残留量の食品が輸入された場合、輸入国